2021年5月23日~26日にハイブリッド(オンライン+現地(Daegu, Korea))で開催されたIEEE International Symposium on Circuits and Systems 2021にて本研究室修了生の小野と、佐藤が研究発表を行いました(発表日は佐藤が25日、小野が27日).
小野の発表は、module learning with errors(MLWE)問題ベース耐量子鍵交換のGPU実装に対する自動パラメータチューニングについてです。量子コンピュータを用いる攻撃に対しても耐性を持つ耐量子暗号としてMLWE問題に基づく暗号に注目が集まっており、その具体例としてKyberがあります。MLWE問題では多項式を要素とする行列を扱う必要があるため,データ並列性の高い処理に対する優位性を持つGPUを利用した実装がこれまでに提案されています。しかし、レイテンシやスループットといった性能の要求がアプリケーションごとに異なり、GPUの種類も多岐にわたるため、各々の要求や環境に合わせた実装が必要となっていました。
そこで本研究では外部から実行パラメータの設定が可能なKyberのGPU実装と、それに対して自動で実行性能の測定と最適なパラメータの決定を行うフレームワークを提案しました。パラメータ決定に用いる評価関数をユーザ側で定義することで要求に合わせた最適化が可能となっており,また、あらかじめパラメータ決定を行うことで実運用におけるオーバーヘッドは生じない設計になっています。評価関数をレイテンシ-スループット比として提案フレームワークを実行した場合、最適化前と比較して評価値が最大で85.5%向上することを確認しました。これらのGPU実装はオープンソースとして公開しています.
佐藤の発表は、Clonable PUFと呼ぶ、限定的な複製を可能とする複製不可能関数(PUF)回路に関するものです。PUF回路はセキュリティ要素回路として用いられるようになってきましたが、認証の際のチャレンジと応答のペアの格納が、データベースを持つサーバに集中する課題がありました。本論文では、データベースを中心とする中央集権型の認証ではなく、限定的な複製を可能とした個別のPUF(CPUF)間での分散的な認証を可能とするための新たなコンセプトを提案しました。
- Tatsuki Ono, Song Bian, and Takashi Sato, “Automatic parallelism tuning for module learning with errors based post-Quantum key exchanges on GPUs,” in Proc. IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS), pp.1-5, May 2021.
- Takashi Sato, Yuki Tanaka, and Song Bian, “Clonable PUF: On the design of PUFs that share equivalent responses,” in Proc. IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS), pp.1-5, May 2021.