以下の2つの論文が電子情報通信学会 英文論文誌 IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences に掲載されました.
1つ目の論文では,リングオシレータを用いた新しいPUF (Physically Unclonable Function) を提案しています.PUFは集積回路の物理的なばらつきを利用することで「チップの指紋」として使用できる回路として近年注目されています.本論文ではリングオシレータの瞬時値をPUFの出力として使用するMRO-PUFを提案しました.従来PUFの多くは,回路の遅延伝播時間によりPUFの出力を決定していたのに対し,MRO-PUFではモジュロ関数を用いることで遅延時間に対して非線形な関係を持つ値を出力します.これにより,機械学習によりPUFの出力を予測する攻撃(機械学習攻撃)に対し,従来型PUFの15倍程度の耐性を実現しました.
2つ目の論文では,メモリスタを用いたニューラルネットワークハードウェアにおける効率の良い学習方法を提案しています.メモリスタは受動素子の1種であり,通過した電荷量によりその抵抗値が変化する特性を持ちます.このメモリスタをアレイ状に多数接続することにより行列とベクトルの積和演算が行えることが知られており,これを用いることでニューラルネットワークのハードウェアを効率良く実現できます.本論文ではこのようなメモリスタニューラルネットワークを対象とし,学習時の主要な処理である勾配計算と重み更新の2つを統合することにより,学習速度を向上させる手法を提案しました.これにより,従来手法に比べ学習の収束時間を約1/2に短縮できることを示しました.
- Masayuki Hiromoto, Motoki Yoshinaga, and Takashi Sato:
“MRO-PUF: Physically Unclonable Function with Enhanced Resistance Against Machine Learning Attacks Utilizing Instantaneous Output of Ring Oscillator,” IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, Vol.E101-A, No.7, pp.1035-1044, July 2018.
DOI: 10.1587/transfun.E101.A.1035 - Satoshi Yamamori, Masayuki Hiromoto, and Takashi Sato:
“Efficient Mini-Batch Training on Memristor Neural Network Integrating Gradient Calculation and Weight Update,” IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences, Vol.E101-A, No.7, pp.1092-1100, July 2018.
DOI: 10.1587/transfun.E101.A.1092