2018年5月17日~18日に北九州国際会議場で開催された第31回 回路とシステムワークショップにて本研究室M2の松本,斎藤,三宅が研究発表を行いました(発表日はいずれも17日).
松本の発表は,イジングモデルを用いた組合せ最適化問題向けプロセッサのRRA/CMOSハイブリッドアーキテクチャに関するものです.イジングモデルは各スピンが隣接するスピンと相互作用をもつ枝で接続された構造を持ち,このスピンを専用プロセッサで並列に更新することで組合せ最適化問題を高速に解くことができます.しかし既存のプロセッサでは,実装可能な相互作用のビット数やスピン間の枝数に制約があり,求解可能な最適化問題が限られます.そこで本研究では多ビットの相互作用をもつ全接続イジングモデルをRRAM/CMOS回路上に実装するためのアーキテクチャを提案しました.評価では,あるワーストケースにおいて,提案手法が符号付き2ビットの相互作用をもつ4接続イジングモデルを実装した既存手法の6倍の電力だけで,符号付き4ビットの相互作用をもつ全接続イジングモデルを実装できることをシミュレーションにより確認しました.
齊藤の発表は,有機トランジスタを用いたBuskeeper PUFの試作と測定に関するものです.有機トランジスタはフレキシブルなデバイスとして様々な回路への応用が期待されるデバイスで,複製困難なIDであるPUFを柔軟さを持ったデバイスで作成することを目標に有機トランジスタ製Buskeeper PUFの試作を行いました.複数の回路の測定によって近い時間に測定するより一日以上の長い時間をおいて測定したほうが出力の一致度が高いことを確認しました.また,一つの回路から複数の出力を得る際に,測定間のリセットが正常に行われていないことを確認し,これを改善する回路を提案しました.シミュレーション,測定それぞれにおいて提案回路でリセット時の動作が改善されていることを確認しました.
三宅の発表は,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の演算量削減に関するものです.CNNは高精度である反面,計算量やメモリ消費量が大きいため消費電力も大きくなってしまうという問題があります.一方,畳み込み演算は周波数領域に変換することで演算量を削減できることが知られていますが,CNNに対しては空間領域と周波数領域の往来が必要になるため,FFTを繰り返し行う必要があります.そこで本発表では,畳み込み演算だけでなくプーリングおよび活性化関数を周波数領域で表現することで,CNNを周波数領域のみで学習する手法を提案しました.評価では畳み込み層2層,全接続層2層のネットワークに対して,乗算回数を81%削減できる可能性があることを示しました.
- 松本 章吾, 業天 英範, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“多ビットの相互作用をもつ全接続イジングモデルのためのRRAMアニーリングプロセッサ”, 第31回 回路とシステムワークショップ (於 北九州国際会議場), pp.48-53, 2018年5月.
- 齊藤 成晃, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“有機トランジスタによるBuskeeper PUFの試作と連続測定のためのリセット回路の検討”, 第31回 回路とシステムワークショップ (於 北九州国際会議場), pp.54-59, 2018年5月.
- 三宅 哲史, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“畳み込みニューラルネットワークの周波数領域学習による演算量削減”, 第31回 回路とシステムワークショップ (於 北九州国際会議場), pp.130-135, 2018年5月.