2016年 電子情報通信学会 ソサイエティ大会(1日目)

2016年9月20日〜23日に北海道大学で開催された電子情報通信学会ソサイエティ大会において本研究室のメンバーが研究発表を行いました.

1日目の20日は,M1の藤田,B4の三宅,忻,田中が発表を行いました.発表内容は以下の通りです.

藤田の発表は,動画からの生体情報推定に関するものです.血液のパルスが伝わる時間PTT (Pulse Transit Time)は年齢や血圧などに相関があるとされていて,健康状態を測る指標として用いられています.本研究ではカメラで顔と手を同時に撮影することにより,非接触でPTTを推定する手法を提案しました.評価ではPTTがバルサルバ効果によって変化するかを見ました.バルサルバ効果とは息を止めることによって血圧や心拍数が変化する現象です.評価の結果,PTTがバルサルバ効果によって変化することを確認しました.

三宅の発表は,Binarized Neural Network (BNN)を用いた画像認識ハードウェアの消費エネルギーに関するものです.畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は,高精度である反面,演算コストが大きく,ハードウェア実装にむけては,消費エネルギーが大きな課題となっています.本発表では,CNNのフィルタの重みを2値化し,大幅に演算コストを下げるBNNという手法についてハードウェアシミュレーションを行い,CNNと比較し,BNNでは,精度低下を0.5%に抑えつつ,消費エネルギーを75%削減できることを確かめました.

忻の発表は,負バイアス温度不安定性(NBTI)の既存モデルの検証に関するものです.NBTIによるトランジスタ劣化の予測モデルとして,RDモデルが提案されていますが,様々なストレス確率で劣化を実際に測定した例は少なく,モデルの正当性が不明でした.本発表では,商用プロセスで製造されたpMOSトランジスタアレイを用いて様々なストレス確率におけるNBTIの測定を行い,RDモデルによるシミュレーションと比較した結果,RDモデルの特性と課題を明らかにしました.

田中の発表は,半導体の製造ばらつきを用いてICの個体認証を行うPhysical Unclonable Function (PUF)の一つ,Bistable Ring PUF (BR-PUF)に関するものです.BR-PUFは機械学習攻撃に強いとされているため,メカニズムの解析が必要と考えられます.本研究では,BR-PUFを構成する各トランジスタの特性から,BR-PUFの出力を予測する手法を提案しました.シミュレーションによる評価の結果,BR-PUFが発振しない条件下では提案手法によりBR-PUFの出力を高精度に予想可能であることが分かりました.

  • 藤田 雄也, 廣本 正之, 佐藤 高史:
    “顔と手の連続静止画からの脈波伝播時間推定に関する一検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, B-20-2, p.431, 2016年9月.
  • 三宅 哲史, 氏家 隆之, 廣本 正之, 佐藤 高史:
    “Binarized Neural Networkを用いた画像認識ハードウェアの消費エネルギー評価”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-6-1, p.64, 2016年9月.
  • 忻 瑞徳, 森田 俊平, 新谷 道広, 廣本 正之, 佐藤 高史:
    “NBTIによるしきい値電圧変動のストレス確率依存性の評価”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-6-2, p.65, 2016年9月.
  • 田中 悠貴, 吉永 幹, 廣本 正之, 佐藤 高史:
    “しきい値電圧ばらつきによるBistable Ring PUFの応答予測”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-6-3, p.66, 2016年9月.
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