SSDM2020

2020年9月27〜30日に開催されたSSDM2020 (International Conference on Solid State Devices and Materials 2020)において,M1の下里,D1のQin,M2の大島が研究発表を行いました (発表日はQinが29日,大島が29日,下里が30日).

下里の発表はUISテストでのSiC MOSFETの動作シミュレーションに関するものです.UIS(Unclamped inductive switching)テストは誘導性負荷を含む回路中でのスイッチング耐性を調べるテストです.スイッチオフ時に生じる誘導起電力によりMOSFETのブレークダウン電圧を超える電圧がかかると,MOSFETがオフ状態にあるにも関わらずアバランシェ電流が流れます.この現象はインダクタに蓄えられたエネルギーが全て消費されるまで継続しますが,そのエネルギーがある一定の値以上では途中でMOSFETが破壊に至ります.本研究では,この破壊原因として挙げられる寄生バイポーラトランジスタの動作と高温によるSiCの真性動作をシミュレーションモデルに組み込み,熱回路と合わせて熱電連成解析をすることでシミュレーションを行いました.特にSiCの真性動作を高温状況下で急激に小さくなる抵抗としてモデル化しました.このシミュレーション結果は実際の測定結果とよく合うことが確かめられました.また,シミュレーションの結果から,UISテストでの破壊は主にSiCの真性動作によるものだと指摘しました.

Qinの発表は,有機薄膜トランジスタ(OTFT)を用いたSRAMセルの設計についてです.OTFTはフィルムなどの柔軟な素材の上に低コストで製造出来ることなどの特性から,新たな回路を作成できるデバイスとして期待されています.有機SRAMはフレキシブルな有機システムのデータ保存に用いられます.しかし,OTFTは現在,n型デバイスとp型デバイスの駆動力の差が大きいため,シリコンで使われているSRAM回路設計をそのまま適用することはできません.本研究では,アクセストランジスタにp型OTFTを用いることで,従来のSRAM構造に比べて面積効率とロバスト性の向上を実現しています.提案したSRAMの安定性については,SPICEシミュレーションにより最適化を行いました.テストチップ上の実測により,提案したSRAMセルが正しく安定に動作できることを確認しました.

大島の発表は,有機薄膜トランジスタ(OTFT)の電圧印加に伴うしきい値電圧変動の定量化に関するものです.OTFTは柔軟な基板上に回路を製造できることから,ウェアラブルセンサなどの応用に注目が集まっています.しかし,回路動作に伴うストレス電圧印加などにより,急速に劣化が進行することが知られており,劣化の抑制はOTFT回路の実用化に向けた課題となっています.そこで本発表では,OTFTの寿命改善に向けて,バイアス・ストレス劣化の原因として絶縁膜キャリア捕獲と半導体層キャリア捕獲に着目し,どちらがしきい値電圧変動に対して影響が大きいのかを実測結果から特定する手法を提案しました.測定したしきい値電圧変動に提案手法を適用することにより,p型では半導体層キャリア捕獲の影響が支配的であること,n型では半導体層キャリア捕獲と絶縁膜キャリア捕獲の両方が同程度影響を及ぼすことが明らかとなり,p型とn型とで劣化の物理メカニズムが異なることが示されました.

  • Kyohei Shimozato, Yohei Nakamura, Song Bian, and Takashi Sato, “An electrothermal compact model of SiC MOSFETs for simulating unclamped inductive switching tests,” in Proc. International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM), pp.273-274, September 2020.
  • Zhaoxing Qin, Bian Song, Kazunori Kuribara, and Takashi Sato, “Design of an Organic SRAM Cell with p-type Access Transistors” in Proc. International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM), pp.437-438, September 2020.
  • Kunihiro Oshima, Kazunori Kuribara, Song Bian, and Takashi Sato, “Quantification of Insulator and Semiconductor Carrier Trapping in Organic Thin Film Transistors Using DNTT and TU-1,” in Proc. International
    Conference of Solid State Devices and Materials (SSDM), pp. 443-444, September 2020.
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