2015年9月8日〜11日に東北大学川内キャンパスで開催された電子情報通信学会ソサイエティ大会においてM1の周,B4の大石,業天,藤田,氏家,森田が発表を行いました(発表日は周,大石,業天が8日,藤田が9日,氏家,森田が10日).各発表内容は以下の通りです.
周は電荷基準モデルを用いたSiCパワーMOSFETの静特性モデリングに関する発表を行いました.電気エネルギーの利用効率を高める材料として,SiC が注目されています.SiCの特性を最大限に引き出すには,正確に模擬できるデバイスモデルを用いて回路シミュレーションを行い,回路特性を最適化する必要があります.電荷基準モデルは精度,計算速度等に優れることから,Si 集積回路の設計によく用いられています.しかし,SiCパワーデバイスは,耐圧向上やオン抵抗低減のためにデバイス構造が大きく異なります.本発表では,縦型構造を考慮した電荷基準モデルに基づくパワーMOSFET電流特性モデルを提案し,シミュレーション結果と実測結果の平均二乗誤差が0.24まで収まりました.
大石はSiCパワーMOSFET寄生ダイオードのモデリングに関する発表を行いました.近年,高効率な電力エネルギー利用の需要の高まりに伴い,SiCパワーデバイスを用いた電力変換回路が注目されています.電力変換回路の開発では,コスト削減や最適設計のために,回路シミュレーション技術が必須で,今回の研究はSi向けPN接合ダイオードモデルでSiCパワーMOSFETの寄生ダイオードのモデル化をすることを目的としました.従来のSiモデルでは正確にモデル化できない部分もありましたが,新たなモデル式を提案することにより精度を高めることができました.
業天は組合せ最適化問題をイジングモデルを用いて解く際のスピンの更新方法に関する発表を行いました.イジングモデルではスピンをエントロピーが小さくなるように更新することで解を求めることができます.しかしスピンの更新方法によっては収束しない場合がありました.本発表では最大カット問題を対象として5つの更新方法を比較し,「全体のスピンを市松模様状に二つに分け,交互に更新する場合」と「全てのスピンを同時に更新する場合」の二つを交互に行う方法が他の更新方法よりも速く収束することがわかりました.
藤田は運動時の心拍推定アルゴリズムに関する発表を行いました.
氏家は畳み込み ニューラルネットワーク(CNN)
森田はプロセッサにおけるNBTIの緩和に関する発表を行いました.負バイアス温度不安定性(NBTI)は,プロセッサ等の回路の故障の原因となります.遺伝的アルゴリズム(GA)で選択したゲートを劣化抑止回路に置換をすることでNBTIの劣化を緩和できると報告がされていますが,従来のGAでは置換箇所を削減することは難しく,面積,電力が余分に必要になってしまいます.本発表では,何度もGAを実行しその重複箇所のみを置換箇所とすることで,少数置換を実現できると示しました.
- 周 瑞, 新谷 道広, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“電荷基準モデルに基づく縦型SiCパワーMOSFETの電流特性モデル化の検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-1-1, p.1, 2015年9月. - 大石 一輝, 新谷 道広, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“SiCパワーMOSFET寄生ダイオードのPN接合ダイオードモデルを用いたモデル化”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-1-2, p.2, 2015年9月. - 業天 英範, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“二次元イジングモデルによる最大カット問題の求解における収束の速いスピン更新方法の検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-1-15, p.15, 2015年9月. - 藤田 雄也, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“粒子フィルタを用いた運動時ノイズに頑健な心拍数推定アルゴリズム”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, B-20-10, p.420, 2015年9月. - 氏家 隆之, 大荷 唯明, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“低電圧畳み込みニューラルネットワーク回路における演算誤り緩和に向けたプーリング手法の検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-3-8, p.53, 2015年9月. - 森田 俊平, 辺 松, 新谷 道広, 廣本 正之, 佐藤 高史:
“プロセッサのNBTI劣化緩和法における劣化抑止制御回路の置換箇所削減に関する一検討”, 電子情報通信学会ソサイエティ大会, A-3-10, p.55, 2015年9月.